第18話

文字数 365文字

 真澄さんと電車に乗って遠出をしている。小田急線か京王線のような、長くて複雑な路線。

 降りる駅をうっかり乗り過ごして、遠くへ運ばれていることに気づく。緑の濃い風景が車窓を飛ぶように過ぎていく。
 座間、といった気がする。
 それとも蔵王?

 私、あわてて車掌室へ駆けつけ、窓越しに訴える。いま、どの駅あたりで、どうしたら引き返して知人(誰)に会いに行けるかと。
 車掌さん(誰)落ちついていわく、「顔を見たらすぐ帰りなさい」と。

 もうそんな時間しかないのかと絶望し、いやそんなはずはない、と、われに返る。
 車掌さん笑いながら「いまのは冗談だけど、たいして時間はとれないよ」と言い、車掌室の窓越しに、紙に書いた路線図を見せてくれる。
 車掌室の窓口がガラスの半円。古めかしい図書館の受付のようだ。
 本当に列車なの?

 けれども列車は進んでいる。

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