第117話

文字数 398文字

 四国だろうか。どこも平らかで、広々と、のどかだ。
 明るい色の砂が敷きつめられて、平屋がいくつも置かれ、そのすべてが私たちの住居らしい。

 小さなプラムのようなくだものをたくさん取った。それをお菓子にしようということで、大叔母がパイ生地をこねている。でもなぜか敷地の向こうに南大塚の坂があるような気がしている。

 南大塚の、大塚書店さんは、プラムのミニパイの味を知っているのだから、あげなくてもいい。でも、それならむしろ試食をしてもらおうということになって、二つばかり勧める。
 大塚書店さんは二人であるらしい。

 たくさんのミニパイを平台に並べて、ふと、はらはらと明るい小雨が降りかかり、すぐに止む。何もかもひろびろと、涼しい。

 けっして食べられない夢のお菓子の味が、私の口の中に淡くあって、安心している。


※何度か出てきていますが、大叔母は故人です。
※豊島区南大塚に、大塚書店という書店はないようです。

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