第115話

文字数 404文字

 私と真澄さんは音大生らしい。
 それも、おんぼろの音大生らしい。
 
 納屋の片隅のような二階で私がピアノを練習していると、すぐそこがはきだし窓で、柵もないので、ペダルを踏むたびに落ちそうで、危ないことこの上ない。
 しかも、なぜか弾くうちに手にインクがつく。

 真澄さんが自分の練習をすませて迎えに来た。私は隠れたふりをして、毛布をかぶって笑いころげる。
 真澄さんも笑っている。

 はきだし窓の外にはミレーの絵のような金色の麦畑が広がっていて、

 でもそれはすぐ濃い緑の植物園につながっていて、もーりーさんがふわたんを乗せた乳母車を押して歩いていく。
 もーりーさんもふわたんも、首をのばして、こんもりとした木のこずえをいっしんに見つめている。何を見つめているのか、手前にいる私には、見えそうで見えない。


※もーりーさんとふわたんは、たまたまツイッターで知った素敵な母娘さんです。と言っても、お二人は私の存在を知りません。

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