第43話

文字数 828文字

 実家の近所らしい。坂と平地。極端に省略されていて、地図の上を歩いているようだ。
 うすら白いような濃淡と、土ほこりと、淡い緑ばかりがある。
 
 そこに一つだけ突き出した、温泉地のホテルのような数階建ての建物に、私は、いるのか、いないのか。
 空中から見ているようでもある。
 
 駐車場で、運転していた誰か、ひどく身近な人らしいのに誰だかわからない誰かが、洒脱な感じで運転席を降り、行ってしまったあと、
 車がきちんと止まっていなかったらしく動きだし、
 
 助手席にいた私は必死でペダルを踏んで、それが運よくブレーキだったらしく車は止まるけれど、あちこち少しずつぶつける。
 
 調べに対して(いつのまにか警察が来た)、
 私が乗っているのに降りて去る人が悪いと訴えると、
 運転していた彼(いつのまにか戻ってきた)、不服そうにしている。
 他にいろいろ事故が起こっていて、彼はそれを助けなくてはならず、私だけにかかずらっていられなかったのだそうだ。
 
 警官は女性なのか、優しい声で、車はマニュアル車ですか、などと聞く。
 最近の車は運転席が空くと自動でロックがかかるのですよ――。運転手のせいではなく、車が古かったのが災難だったと言っているわけ。
 なにか釈然としない。
 私が子ども扱いされているのは、うさぎみたいなぬいぐるみをしっかり抱きしめているせいらしい。
 
 取り調べが終わって、ホテルの部屋に通される。やたらに窓が多く、どれもはきだし窓で、カーテンがそれぞれ風にひるがえっている。
 ベランダへ出ると、そこから外へ歩いていける。
 何もない白茶けた道を歩いていく。
 
 すると動物がちらほら現れ、それがみんな角や棘のある恐竜。
 驚いて息がとまりそうになり、逃げようとするけれども、逃げきれるものではない。
 恐竜たちは走るわけでもなく、ゆっくり近づいてくるとはいえ、恐竜なのだから、私はもう逃げられないのだ。
 
 残された道は一つ、必死で、これは夢だ、醒めなきゃ、と念じて、起きる。

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