第7章 はじまり - 筋書き(2)

文字数 763文字

              筋書き(2)


 優子は言われるまま椅子に座り、何が起きるのかをドキドキして待った。

 すると突然、壇上に中津がスーツ姿で現れ、

 ホール全体がゆっくりと暗くなっていく。

 と同時に、椅子に備え付けられた小さなライトが点灯し、

 それぞれの手元をしっかりと照らした。

「ずいぶん、久しぶりになりますが、またまた皆さんのお力をお借りする時が
 やって参りました」
 
 それは優子にとって初めて目にする......

 中津の男らしい言葉と、その姿だった。

「えっと、スタッフはいつものように、最初の15分程度でそれぞれ別室に移
 動していただきます。キャストの方は全体像をつかんでいただいてから、毎
 度お馴染み個別面談になりますので……」
 
 中津の声がスピーカーから途絶えると、

 天井から巨大なスクリーンが下りてくる。

 そしてパッと明るくなったと思ったら、

 スクリーンに1枚の写真が大写しになった。

「ちょっと、何よこれ! 」

 思わず呟く優子自身が、

 スクリーンの中でウエディングドレス姿となっている。

 それは若かりし頃の写真で、

 彼女の隣には、タキシードを着込んだ武井信が寄り添い写っているのだ。

「これが今回のターゲットと、依頼主の若かりし頃のツーショット。この2人
 が今後どのようになってしまうのか? これまた皆さんにかかってますから
 ね! 」
 
 一見何かのショーでも見ているようだが、

 劇団関係者たちの目は真剣そのものに見える。

「さて、それでだ……こっちが17年後に撮られた現在の写真。残念ながらツ
 ーショットがなくってね。とにかく、この男性の方の顔、ようく頭に叩き込
 んどいてよお! 」
 
 中津がなんとも嬉しそうにそう言うと、

 どこかのパーティー会場で撮られたのだろう武井の顔が、

 見る見るスクリーン一杯に大きくなった。
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