第7章 はじまり - 別荘〜爆発

文字数 796文字

             別荘〜爆発


「今のはなんだ!? 」 

 突然鳴り響いた物音に、岡島が瞬時に大声を上げた。

「分かりません! でも、あの音はもしかしたら! 」

 武井の知らない若い男が、すぐに岡島へ叫び返す。

 武井が鉄串を振り上げるのと同時に、

 もの凄い爆音が辺り一面に鳴り響いた。

 その時、誰もが一瞬、雷でも落ちたのかと思う。

 ところがすぐにそうではないことに気が付き、

 皆の視線は建物の方へと注がれる。

「こんな時に、爆発させるわけが……」

 呟くような岡島の声がふと、途切れた。

 彼の目はテラスの端から端へと動き、

「おい、優子さんは……? 」

 と、独り言のように呟く。

 そしてさらに……、

「おい!優子さんはどこにいる!? 聞いていた段取りじゃ……まだテラスに
 いるはずじゃないのか? 」
 
 誰に言うでもなくそう続けると、その顔をぐるっと360度回転させた。

 しかしどこにも......優子はいない。

 するとそこへ、飯田良子を演じた中村愛が駆け寄って来て、

 今にも泣き出しそうな声で岡島への答えを口にした。

「優子さん、さっき中に入っちゃったんです。おばあちゃんの車椅子押しなが
 ら……どうしてだろうって思ったんですけど、きっとまた段取りが変わった
 のかなって思って……違うんですか? 」
 
 唇を震わせながらそう言う愛の目に、燃え盛る炎が映り揺れている。

 その時には既に、何人かが室内に入ろうと試みていた。

 しかしテラスから見る限り、

 リビングはもう火の海でとてもその先に進めそうもない。

 それからは男たちが玄関ほか入れる場所を探して、

 建物の周りをぐるぐると走り回った。

 騒然とする中、谷川と呼ばれた男だけは膝を突き、

 1人下を向いたまま独り言のように呟いていた。

「俺の、俺のせいだ……」

 何度か同じ言葉を呟き、

 ふと黙ったと思ったらおもむろに顔を上げ、

 岡島に向けて声を限りに叫ぶのだった。
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