第7章 はじまり - 中津の混乱(2)
文字数 741文字
中津の混乱(2)
そうして中津はドアを蹴り開け、
室内に飛び込んでから、台本通りの行動を取った。
ところがダイニングに走り込むと、武井の姿は既になく、
愛も台本とはまるで違うところに倒れ込んでいる。
「愛ちゃん! 何があったの!? 」
中津が慌てて駆け寄ると、
真っ赤に染まった床の上に、目を閉じたままの愛が横たわっていた。
「愛ちゃん、起きてよ……」
本当なら、もう目を開けていいはずなのに……、と、
そう思った瞬間だった。
中津はそこで、あるはずのないものを見つけてしまう。
横になっている愛の傍らに、1本のナイフが転がっていたのだ。
それはなんとも変わった形をしていて、
その刃先にも、赤い液体がべっとり纏わり付いている。
――ウソ……こんなものがあるなんて、台本にはないじゃない!
中津の立っている床が、一瞬グニャッと揺れ動いたように思えた。
これまでも、
演者がちょっとした怪我をするなんてことはしょっちゅうだったし、
依頼者との裁判沙汰や、
実質的に法律に触れるようなことだってやってきたのだ。
ただその度に、莫大な資金力と、
その金に群がる権力者たちのお陰で、
いつも難なく切り抜けられた。
しかし殺人とまでなればそう簡単にはいかない。
まして殺されてしまった愛の夫は、有名事務所のエリート弁護士……。
――……これで終わりだ……もっと早く、
――こんなことやめれば良かった……。
中津はそんな絶望感と共にしゃがみ込み、
声を上げてわんわん泣き出してしまう。
『団長! どうしたんです!? 何があったんですか!? 』
「愛ちゃんが、愛ちゃんが死んじゃったのよおおお! 」
耳の中で響き渡るイヤフォンからの声に、
中津は大声でそう叫び返した。
そうして中津はドアを蹴り開け、
室内に飛び込んでから、台本通りの行動を取った。
ところがダイニングに走り込むと、武井の姿は既になく、
愛も台本とはまるで違うところに倒れ込んでいる。
「愛ちゃん! 何があったの!? 」
中津が慌てて駆け寄ると、
真っ赤に染まった床の上に、目を閉じたままの愛が横たわっていた。
「愛ちゃん、起きてよ……」
本当なら、もう目を開けていいはずなのに……、と、
そう思った瞬間だった。
中津はそこで、あるはずのないものを見つけてしまう。
横になっている愛の傍らに、1本のナイフが転がっていたのだ。
それはなんとも変わった形をしていて、
その刃先にも、赤い液体がべっとり纏わり付いている。
――ウソ……こんなものがあるなんて、台本にはないじゃない!
中津の立っている床が、一瞬グニャッと揺れ動いたように思えた。
これまでも、
演者がちょっとした怪我をするなんてことはしょっちゅうだったし、
依頼者との裁判沙汰や、
実質的に法律に触れるようなことだってやってきたのだ。
ただその度に、莫大な資金力と、
その金に群がる権力者たちのお陰で、
いつも難なく切り抜けられた。
しかし殺人とまでなればそう簡単にはいかない。
まして殺されてしまった愛の夫は、有名事務所のエリート弁護士……。
――……これで終わりだ……もっと早く、
――こんなことやめれば良かった……。
中津はそんな絶望感と共にしゃがみ込み、
声を上げてわんわん泣き出してしまう。
『団長! どうしたんです!? 何があったんですか!? 』
「愛ちゃんが、愛ちゃんが死んじゃったのよおおお! 」
耳の中で響き渡るイヤフォンからの声に、
中津は大声でそう叫び返した。