最終章 回帰 - 謝罪(2)

文字数 693文字

                 謝罪(2)


「どうぞ、何でも聞いてちょうだい......ただし、夫婦円満の秘訣なんてのじゃ
 なければよ! そんなんじゃなければ、そうね、だいたいは答えられると思
 うわ」
 
 そんな声に、武井は瞬時に顔を強ばらせる。

 それでもすぐに悟ったような表情へと変わり、

 そのままの顔を優子の方に向けながら、中津への声を上げるのだった。

「ふたりはどうやって、あそこから助かったんだ? あれは、自殺なんかじゃ
 ないんだよな? 」

「もちろん、違うわよお! ねえ、優子さん! 」

 武井の隣に座る優子を覗き込むようにして、

 中津が正面から、いかにも楽しそうな声を返した。

「お2人はね、地下に隠れてたの。あなたが自殺なんて馬鹿なことしかけた
 後、みんなで大騒ぎだったのよ……ホント、猫の手も借りたかったわ」
 
 別荘で武井が気を失い、

 さらに薬品まで嗅がされ完全なる眠りに落ちた後、

 一度消え去ったワゴン車が1台だけ戻ってくる。

 そこから降り立ったのは、谷川をはじめとするメインキャストの面々。

 しかしそれだけ女性が多く、

 地下室の扉を開けるのに思いの外手間取っていた。

「その時はまだ2つのシーンが残っていたから、スタッフや脇役の連中はみん
 なそっちに行っちゃっててね。ホント、ショベルカーでも用意しとけばよか
 ったって大後悔! 」

「ちょっと待ってくれ、地下室って何のことだ? そんなものが、いったいど
 こに……? 」

「テラス続きの部屋の下にね、勝手ながら造らせていただきました。部屋って
 いうより、まあ、倉庫って感じになっちゃったけど、結構頑丈なシェルター
 が出来上がったのよ」
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