第8章 収束 - さらなる狂い(4)

文字数 689文字

               さらなる狂い(4)


 そこは、町外れにある平屋の一軒家。

 ひと月ちょっと前に見掛けた時には、

 古いなりに、きちんと整理されている印象だった。

 ところが今や、窓という窓ガラスは割れていて、

 玄関前にたくさんのゴミらしきものが放置されている。

 宇佐美は玄関から中を覗き込んで、女の子の名を何度も叫んだ。

「由岐ちゃん! 由岐ちゃん! いるのか!? 」

 すると突然、ボロボロに切り刻まれたランドセルが目に飛び込む。

 台所の先に見える畳の上にそんなものを見つけて、

 彼は家の中へと飛び込んでいった。

 それはまさに、目を覆いたくなるほどにボロボロだったのだ。

「まさか……」

 そう呟く彼の脳裏に、

 二度と背負うことができなくなったランドセルが思い浮かぶ。

「うそ……だろ……? 」

 再び彼はそう呟いて、しばし目の前の現実を疑った。

 由岐の父親が目の前にいたのだ。

 空になった一升瓶を抱えて、完全に酔いつぶれてしまっている。

 そのすぐ隣で、由岐もやはり仰向けになって寝ているように見えた。

 しかし、横になってはいるが、決して眠っているわけじゃない。

 生きているわけがなかった。

 もし......これで息をしているというなら、

 彼女は特殊な能力の持ち主、ということになるだろう。

「この野郎……」

 ボロボロ、だったのだ。

「おまえが……こんなことやったのか? 」

 実の父親によって切り刻まれて、

「起きろ! この野郎! 」

 二度と目を覚ますことのない由岐の姿が......そこにはあった。

 そして、その隣に寝ている男へと、

 宇佐美は声を限りに叫び声を上げる。

「起きやがれ! 」
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