第4章 危機 -  不思議な再会

文字数 908文字

             不思議な再会

 
 富田卓也 51歳。 

 柴多が以前優秀だからと言って、

 どこかの企業から引き抜いてきた男だった。

 柴多が見込んだだけあって、

 彼はごたついていた経理部門を短期間で見事に立て直す。

 優秀ではあるが、その分融通が利かず、
 
 武井とは何かにつけぶつかることが多かった。

 まだ本社ビルなどなく、上場さえしていない頃、
 
 会社の金をラフに扱う武井に富田は何度も突っ掛かった。

「社長! 本当に上場なさるお気持ちがあるんですか!? 」
 
 そうしたいのならきちんとしろと、富田は一切の妥協を許さない。

 ところがやっと上場を果たし、何年か後に本社ビルが完成して間もなく、
 
 富田は突然退職を余儀なくされる。

 なんと、深夜酒に酔ってホステスを会社に連れ込み、

 こともあろうに、社長室のソファで事に及んでしまうのだ。

 あんなに真面目だった男がどうして?
 
 社員のほとんどがそう感じている最中、

 富田の退職後、すぐに経理部門の廃止が決まる。

 武井はその数ヶ月後、経理関係すべてを外部委託に切り替えてしまった。

「あれを……あいつは恨んでるのか……? 」

 武井は思わずそう声にして、口に入り込んだ水を慌てて吐き出した。

 彼はシャワーを浴びながら、

 富田についての記憶を辿っていたのだった。

 ちょうど1年ほど前のこと、

 退職後の冨田のことが、社内で1度だけ話題に上がったことがあった。

「覚えてますよね、4年前にうちを退職した富田経理部長。彼、自殺を図った
 そうですよ。幸い命に別状はなかったそうですが、どうします? うちから
 も、見舞金を出しますか? 」

「馬鹿な、どうして今さら、うちがそんなもの出す必要がある? だいたいこ
 っちの方が迷惑を被ったんだから、まったくそんな必要ないだろう!? 」

 柴多の申し出に、武井の返答はけんもほろろなものだった。

 ――だからって、どうして糞をかけられなきゃならんのだ!? 
 
 ――あのくらいで自殺を図るなんて、所詮あいつが弱過ぎるんだ! 
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