第7章 はじまり - 別荘〜爆発(2) 

文字数 877文字

             別荘〜爆発(2)


「岡島さん! 俺のせいです! リモコン! 優子さんが持ってるんで
 すよ! 」

「リモコン? リモコンっていったいなんだ!? 」

「起爆装置です。俺がスイッチを押すことになってた……黒い、ちっちゃ
 な……」
 
 次に続いた〝リモコン〟という再びの言葉は、

 誰の耳にも届くことはなかった。

 それはやはりその時、

 別荘の中から2度目の爆発音が鳴り響いたからだった。 

「俺……まさか優子さんが押しちゃうなんて……全然思ってなくて……」

「おまえ、彼女に渡したのか!? 」
 
 ――ばっかやろう! 

 と続き叫んで、岡島が建物の方へと行き掛ける。

 が、すかさず武井が立ち塞がり、岡島の行く手を阻むのだった。

「優子さん! 優子さん! 」

 愛をはじめ何人もが、建物に向かって優子の名前を呼んでいた。

「武井行かせてくれ! 優子さんとお袋さんが、まだ中にいるんだぞ! 」

 武井は岡島のそんな声にも、鉄串を彼の胸へと向けて動かない。

「おい! 分からんのか!? このままだと2人とも焼け死んでしまうん
 だ! 」

「これはいったい……何のお遊びだ? 」

「お遊びなんかじゃない。おまえがさっき現れた時点で、もう全部現実になっ
 ちまったんだ! 」
 
 岡島の武井への声は、もはや涙声のように伝わり響いた。

 今や窓という窓から、真っ黒な煙が漏れ始めている。

 きっと炎は、既に家中に燃え広がっているのだろう。

 玄関から入り込んだ何人かも、

 廊下から先へは進めなかったと咳き込みながら声にしていた。

 その場にいる誰もが、

 起きてしまった現実が信じられないといった感じで、

 吹き出し始めた炎へとただ目を向けている。

 そのうちすぐに、敷地のわりに小さな建物があっという間に炎に包まれ、

 見えなくなった。

「もう……とても、間に合わない……」

 震える声で、岡島が小さくそう呟いた。

 その前では、

 武井が未だにあらぬ方を向いて、

 何事かを1人、呟き続けている。

  ――これはいったい、何のお遊びなんだ……?

 武井はまるで念仏を唱えるように、心で何度もそんなことを思った。
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