コンテストお題から何も思いつかない件
文字数 1,245文字
夏休み期間のプール解放日、少年は少しでも気を紛らわせる為に学校へ向かった。そうして、一番暑い時間帯を学校のプールで過ごした後、少年は濡れた水着やタオルを学校指定の袋に入れて下校する。
少年の体力は、プールに入ったことで消耗されていた。多くの大人が経験してきたことであるが、体育で習う競技の内、授業の後で一番眠気を誘うのは水泳である。暑さを避ける快適さの反面、水泳は多くのエネルギーを体から奪う。水温や水圧、陸上競技には無い要素が、体からエネルギーを奪っていくのだ。
そうして、少年は思っていた以上に弱り、まだ高い位置にある太陽に照らされている内に倒れてしまった。八月のアスファルトは少年の肌を焼き、背後からも陽光が少年を焼く。気を失ったままの少年はその状況から動くことは出来ず、時間だけが過ぎていった。
それから幾らかの時間が経っただろうか、偶然通り掛かった主婦が少年を見付け救急車を呼んだ。不幸にも、その近くに日陰はなく、主婦が少年に水分を摂らせようにも反応がない。少年の呼吸は速く細かかった。この為、主婦は日傘を少年に立て掛け、小さなタオルを濡らして少年の頭に乗せた。
そうしている内に救急車は到着し、少年は病院に運び込まれた。通報者が通り掛かっただけの他人であった為、病院側は少年の所持品から身元を判断しようと試みる。
少年の所持品は、入学当時から使っている水泳セットだけだった。しかし、それにはクラスや名前が記載され、倒れた場所から少年の通う学校が推測された。