王洽 名僧法汰
文字数 1,018文字
謝安は
このように語っていた。
「かれの立ち振る舞いは
実に落ちいたもので、心地良い」
そう評される彼が面倒をみる人物に、
北方からやって来た彼は、
はじめ名を知られていなかったが、
かれのことを
王洽が名士のもとに訪問する時には
必ず法汰を同道させ、
かれを連れ出せない場合には、
王洽も出かけるのをやめてしまう、
それほどの重んじっぷり。
あの王洽さんがそこまでする人なのだ!
と、法汰の名もまた
重くなったそうである。
そんな法汰については、言行がひとつ
世説新語に残されている。
「
つまりは同じことを言っておるのだ」
お、おう……?
謝公與王右軍書曰:「敬和棲託好佳。」
謝公は王右軍に書を與えて曰く:「敬和は棲託好佳たり」と。
(賞譽141)
初,法汰北來未知名,王領軍供養之。每與周旋,行來往名勝許,輒與俱。不得汰,便停車不行。因此名遂重。
初、法汰の北より來たるに未だ名を知られざらば、王領軍は之と供養す。與に周旋し、名勝が許に往きて行來せる每に、輒ち與に俱とす。汰を得ざらば、便ち停車し行かず。此に因りて名は遂に重し。
(賞譽114)
汰法師云:「『六通』、『三明』同歸,正異名耳。」
汰法師は云えらく:「『六通』、『三明』は同じきに歸せど、正に名を異としたるのみ」と。
(文學54)
王洽
晋書には「
六通・三明
天眼通(ものすごい視力)
天耳通(ものすごい聴力)
身通(空を飛ぶ)
他心通(読心の術)
宿命通(過去を見通す)
漏尽通(ひとから煩悩を断ち切る)
という六つのブッダパワーが六通。
三明はこれを分類した感じになる。
在心の明(現在におけるすごいアレ)
→天眼、天耳、身、他心、漏尽の総称
過去心の明(過去におけるすごいアレ)
→宿命
未來心の明(未来にまつわるすごいアレ)
→天眼。
天眼が在心と未来心にこそ
関わっているものの、
要は分類の仕方の違いでしかないので
同じもんを別の言葉で言い換えてんですよ、
ということになるらしい。
空飛ぶのか……ブッダ……