謝安23 七言詩

文字数 653文字

王徽之(おうきし)謝安(しゃあん)さまの元を訪問する。
この時謝安さま、ふと
気になったことがあったため、
王徽之に質問した。

「そう言えば、ここ最近では
 七言詩、というものが
 流行り始めているそうだな。

 これは、どのような感じの
 ものなのだろうか?」

この頃の詩には、
あまり七語で一句、
と言うスタイルは
確立されていなかったようなのだ。

王徽之、謝安さまの顔を
しばし見てから、おもむろに歌う。

「昂昂若千里之駒
 汎汎若水中之鳧」

楚辞(そじ)卜居(ぼくきょ)よりの引用である。

壮健な馬として
千里を駆け回るのが良いか、
それとも水面に遊ぶカモとして、
ぷかぷか気軽に
浮いていた方がよいのか。

謝安さま、本当は
引きこもってたいんじゃないですか?

チクリと刺してくる
王徽之であったとさ。



王子猷詣謝公,謝曰:「云何七言詩?」子猷承問,荅曰:「昂昂若千里之駒,汎汎若水中之鳧。」

王子猷は謝公に詣で、謝は曰く:「七言詩とは何をか云わんや?」と。子猷は問いを承け、荅えて曰く:「昂昂たるは千里の駒が若し、汎汎たるは水中の鳧が若し」と。

(排調45)



楚辞卜居
ちなみに周辺を切り出すとこうなる。

 寧昂昂若千里之駒乎
 將氾氾若水中之鳧乎
 與波上下 偸以全吾躯乎

 寧與騏驥亢軛乎
 將隨駑馬之跡乎

いやよく即興でこの切り出しできますね!? しかもきっちり「ク」と「フ」で韻まで踏んでます。七語詩としての説明として成立してんのかは微妙だけど、少なくとも「七文字の詩」としての体裁はきっちり踏襲してる。奇行ばっかり目立つ王徽之ですけど、やっぱりとんでもない文人だったんだなぁ、というのは実感するのです。

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