王衍10 マッド奥さん1

文字数 1,263文字

王衍(おうえん)の妻は郭予(かくよ)
つまり郭淮(かくわい)さんの親族の娘なわけだが、
これがまた、無能なくせに強欲。
しかも蓄財に余念がなかった。
更には郭氏、王衍の公務にまで
口出ししてきたりもする。

いや郭予さんよく嫁に出したなそんなの、
よりによって王氏のホープに……。

王衍、郭氏について憚っていたのだが、
とはいえ彼女を制御しきれない。

そんな彼女にも苦手な人がいた。
後に幽州(ゆうしゅう)刺史となる、李陽(りよう)
洛陽(らくよう)における大俠客として知られ、
前漢と後漢を渡り歩いた俠客、樓護(ろうご)
なぞらえられるほどだった。

そこで王衍、郭氏を注意するのに

「お前の振る舞いが良くないと
 言っているのは、私だけではないぞ。
 李陽もそう言っている」

そう叱りつけると、郭氏、
ややおとなしくなるのだった。

夷甫さんアンタ……


また、王澄(おうちょう)が十四、五のときのこと。

郭氏が、その貪欲さのあまり、
肥料にするためか、召使いに命じ、
路上に落ちていた

うんこ

を拾わせていたのにめぐりあう。

いやいや兄嫁殿、そりゃねーわ!
天下の王氏の召使いに、なにやらせてんの!
郭氏にそう注意すると、郭氏激おこ。

「はぁ!? お前の母親は、今わの際、
 確かに私におまえのことを託したさ!
 が、おまえに私のことを
 託しはしなかっただろう!」

そう言って、王澄の袖を掴むと、
ステッキで殴りかかってくる!
なんだこのヒスババア……。

ただし王澄、マッチョメンであったため、
何とかそいつを振り切り、脱出。
窓から逃げ出した。



王夷甫婦郭泰寧女,才拙而性剛,聚斂無厭,干豫人事。夷甫患之而不能禁。時其鄉人幽州刺史李陽,京都大俠,猶漢之樓護,郭氏憚之。夷甫驟諫之,乃曰:「非但我言卿不可,李陽亦謂卿不可。」郭氏小為之損。
王夷甫が婦は郭泰寧が女なれど、才は拙く性は剛、聚斂に厭くこと無く、人事に豫る。夷甫は之を患えど禁ず能わず。時に其の鄉人の幽州刺史の李陽、京都の大俠にして、猶お漢の樓護がごときなれば、郭氏は之を憚る。夷甫は驟しば之を諫むに、乃ち曰く:「但だ我が言は卿の可ならざるに非ず、李陽は亦た卿の可ならざるを謂いたらん」と。郭氏は小しく之が為に損ず。
(規箴8)

王平子年十四、五,見王夷甫妻郭氏貪欲,令婢路上儋糞。平子諫之,並言不可。郭大怒,謂平子曰:「昔夫人臨終,以小郎囑新婦,不以新婦囑小郎!」急捉衣裾,將與杖。平子饒力,爭得脫,踰窗而走。
王平子の年の十四、五なるに、王夷甫が妻の郭氏の貪欲にして、婢に令し路上の糞を儋わしむを見る。平子は之を諫め、並べて不可を言う。郭は大いに怒り,平子に謂いて曰く:「昔の夫人は終に臨み、小郎を以て新婦に囑せるも、新婦を以て小郎に囑せざらん!」と。急に衣裾を捉え、將に杖を與えんとす。平子は饒力なれば、爭い脫せるを得、窗を踰え走る。
(規箴10)



郭氏
すっげえ、なんだこのクソババア……これ郭氏と王氏との間で諍いの種になったんじゃないかしら。さすが郭槐(かくかい)さんの親族ですね、という感じ。そう、この人がデカイ面でいられたのは、かの賈南風(かなんふう)の親族だったかららしいのです。賈南風たちが司馬倫(しばりん)に殺されたあと、この人、どんなふるまいに変わったんでしょうね。
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