王済4  スモモを求めて

文字数 870文字

和嶠(わきょう)について紹介しておこう。
武帝(ぶてい)司馬衷(しばちゅう)の成長を
確認させたところ
「あれはダメですね」と、
武帝に向けてズバッと言い切った人だ。
とりあえず和嶠、ドケチであった。

かれの家に甘い実を付ける
スモモが植えられていた。

王済(おうさい)がスモモをください、
と願い出ると、渡したのは
十個にも満たない数。

この野郎、見てやがれよ。

王済、和嶠が宮廷へ
宿直に出たすきを見て、
年若い大食らいを何人か引き連れ、
斧をもって和嶠の庭園に忍び込んだ。

そして彼らとともに、
スモモを食べられるだけ食べると、
スモモの木を伐採、車に積み込み、
後日それを和嶠に送り付けた。

そして聞く。

「どうだい、このスモモ。
 あなたの家のスモモと較べて、
 どちらがおいしいかな?」

宿直から帰ってきたところで
素寒貧のスモモの木に出会った
和嶠さんである。
王済のこの行動の意味に
すぐさま気付いた。

こうなってしまえば、
和嶠さんももう
苦笑いするしかなかったという。



和嶠性至儉,家有好李,王武子求之,與不過數十。王武子因其上直,率將少年能食之者,持斧詣園,飽共噉畢,伐之,送一車枝與和公。問曰:「何如君李?」和既得,唯笑而已。

和嶠が性は至儉なり。家に好き李有り、王武子の之を求むに、數十を過ぎず與う。王武子は其の上直なるに因り、少年の能食の者を率將し、斧を持ちて園に詣づ。飽じ共に噉らい畢わらば、之を伐り、一なる車にて枝を和公に送り與う。問うて曰く:「君が李とでは何如?」と。和の既に得るに、唯だ笑うのみ。

(儉嗇1)



なんだこれ(なんだこれ)

それにしても、王済さんの行動がただただキチガイなんですけど……そういや和嶠さん、武帝に対して「王済のやつは厄介ですよ」って評価を下してたな。なるほど、こういう応酬があれば、あいつはやべぇって思うわけです。

ただこのエピソード、晋書だと「武帝が」スモモを求めたことになってるんですよね。王済の行動は、それに対する報復措置として書かれてます。まぁ、それはそれで意味不明ではあるんですが。敢えて武帝を外し、二人に収斂することにより、より方正11のエピソードを際立たせた、という感じなのかしらね。
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