王済2 孫楚の歎き
文字数 820文字
いろんな人から仰ぎ見られていた。
が、かれ自身が敬服していたのは、
その王済が、死んだ。
たくさんの名士たちが葬儀に参列。
そこにやや遅れて、孫楚も到着する。
遺体の前に座り、孫楚、慟哭。
もらい泣きするものも、多数。
一通り慟哭したあと、孫楚は言う。
「きみはおれのやる
ロバの鳴き真似が好きだったな。
ならばはなむけだ。
最後に、君に披露しておこう!」
そして、葬儀の只中、
名士らが居並ぶ中、
ロバの鳴き真似を披露する。
人々はびっくりするやら、呆れるやら。
中には露骨に、くすくす笑う者までいた。
孫楚、彼らを見て、言い放つ。
「そなたらがのうのうと生きていて、
なぜかれが死なねばならんのだ!」
孫子荊以有才,少所推服,唯雅敬王武子。武子喪時,名士無不至者。子荊後來,臨屍慟哭,賓客莫不垂涕。哭畢,向靈床曰:「卿常好我作驢鳴,今我為卿作。」體似真聲,賓客皆笑。孫舉頭曰:「使君輩存,令此人死!」
孫子荊の有才なるを以て、少きに推服さる所たれど、唯だ王武子のみを雅敬す。武子の喪ぜる時、名士に至らざる者無し。子荊は後に來たり、屍に臨み慟哭せば、賓客に涕に垂んとせざる莫し。哭を畢え、靈床に向いて曰く:「卿は常に我が作したる驢が鳴を好めり、今、我れ卿が為に作さん」と。似て真に聲を體し、賓客は皆な笑う。孫は頭を舉げて曰く:「君が輩をして存ぜしむるに、此が人をして死なしまんか!」と。
(傷逝3)
王済と
こちら参照。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054884883338/episodes/1177354054884957674
ロバの鳴き声を好む、というのは、まぁたぶんに滑稽なふるまいだったんだろうとは思うわですよ。それをあえて演じる、それも真剣に、というところに含意があるんでしょう。