桓温11 謝万のアホと謝安

文字数 828文字

謝万(しゃまん)前燕(ぜんえん)との戦いで、
ど派手に敗北した後のことである。

桓温(かんおん)さま、同姓の同僚、桓伊(かんい)に質問する。

謝安(しゃあん)のやつ、
 謝万のぼんくらに任せれば
 ああなることは目に見えていたろうに。
 何故ヤツは止めなかったのだ」

すると桓伊は答える。

「分かってはいても、
 言うのを憚られたのでしょう」

すると桓温さま、かっとキレる。

「あの弱虫にか!?
 どこに憚るいわれがある!」



桓公問桓子野:「謝安石料萬石必敗。何以不諫?」子野答曰:「故當出於難犯耳。」桓作色曰:「萬石撓弱凡才、有何嚴顏難犯?」

桓公は桓子野に問うらく「謝安石は萬石の必ず敗るるを料れるに、何をか以て諫めざらんか?」と。子野は答えて曰く「故より、當に犯し難きに出づるべきのみ」と。桓は色を作して曰く「萬石は撓弱にして凡才なり。何ぞ嚴顏の犯し難き有らんか?」と。

(方正55)



桓伊
全くもって目立たないがかなりの名将で、淝水(ひすい)の戦いでも功績を挙げている。統治者としても有能なうえ人格者、楽器を持たせれば天下一品の腕、気ままな皇帝に対しては諫言も厭わない実直、加えて私蔵していた武具の類は自らの死後全て国に献上。残っているエピソードがことごとくかっこいいのに。まぁこんだけ美しいエピソード残しといて最期悲劇に見舞われました、的なドラマに巻き込まれたわけでもないしなぁ。この人が目立たないのは勿体ないけど、桓温さまの周りには桓豁(かんかつ)桓沖(かんちゅう)桓石虔(かんせきけん)桓石生(かんせきせい)と、同姓の名将が多すぎますからねえ。そう言う意味ではとても不利な方でしょう、知名度的な意味では。まぁとりあえず、晋書中でも割とこういう忖度みのある人格者として書かれてます。世説新語ではここが初登場なので、この忖度が age なのか sage なのかはまだはっきりと判じ切れない所。

そしてこう分厚く書いてるだけあって、東晋の武将の中じゃかなり好きな人物です。つーか桓温さまも理解してほしいもんですが、そこをストレートに言えるくらいの性格だったら謝安四十歳まで引きこもってるわけないでしょうよ。
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