道壹道人 降雪に遇う

文字数 567文字

道壹道人(どういつどうじん)という僧侶は、
とにかく発言がきらびやかである。
無駄にきらびやかである。

たとえば、建康(けんこう)から会稽(かいけい)東山(とうざん)
戻ってきたとき、途中で雪に
降りこめられたことがあった。
ただその時、
そんなに寒くはなかったそうなのだが。

帰ってきた道壹道人に対し、
僧らが道中の話を聞こうとした。

そしたらまぁ、こんな調子である。

「風霜の厳しさは、言うまでもない。
 もくもくと陰鬱なあられ雲が
 集ったかと思うと、
 たちまち村落には吹雪に遭い、
 山林はすぐさま真っ白となったよ」

おいおい、大袈裟ですよ道人……。



道壹道人好整飾音辭,從都下還東山,經吳中。已而會雪下,未甚寒。諸道人問在道所經。壹公曰:「風霜固所不論,乃先集其慘澹。郊邑正自飄瞥,林岫便已皓然。」

道壹道人は音辭を整飾せるを好む。都下より東山に還ぜるに、吳中を經る。已にして雪下に會えど、未だ甚だ寒からず。諸道人は道に在りて經る所を問う。壹公は曰く:「風霜は固より論ぜざる所。乃ち先に其の慘澹なるを集め、郊邑は正に自ら飄瞥にして、林岫は便ち已に皓然たり」と。

(言語93)



道壹道人
この人のお言葉、孫綽(そんしゃく)さんが大好きだったそうである。「かれのお言葉は春先の萌えあがる畑のようにかぐわしい!」とか言っちゃってる。何と言うか、本文からもビミョーにケーハクさが伝わってくるし、そう言う感じのお方だったんでしょうなァ……。
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