孫綽7  謝安妻孫綽を斬る

文字数 537文字

孫綽(そんしゃく)ら兄弟が謝安(しゃあん)さまの邸宅に
宿泊した時のことである。

あの謝安さまのご自宅である。
緊張してしかるべきところ、
彼らは実にフランクに過ごしていた。

その様子を謝安さまの夫人、(りゅう)氏が
物陰からじっと聞いていた。

孫綽らが帰るのを見送った後、
謝安さま、劉氏に質問する。

「昨晩の客は、
 お前にはどう映ったかね?」

劉氏は答える。

「我が兄、劉惔(りゅうたん)の屋敷では、
 ついぞ見かけたことのない類の
 人種でございましたわね」

謝安さま、たちまち言外の
「あんな下品な奴ら」を読み取り、
縮こまりあがるのだった。



孫長樂兄弟就謝公宿,言至款雜。劉夫人在壁後聽之,具聞其語。謝公明日還,問:「昨客何似?」劉對曰:「亡兄門,未有如此賓客!」謝深有愧色。

孫長樂の兄弟は謝公が宿に就き、言は款雜に至る。劉夫人は壁の後にて之を聽き、具さに其の語を聞く。謝公は明くる日に還ぜるに、問うらく:「昨の客は何に似たらんか?」と。劉は對えて曰く:「亡き兄が門には、未だ此くの如き賓客は有らざるなり!」と。謝に深く愧づる色有り。

(輕詆17)



劉氏と謝道韞(しゃどううん)ってめっちゃ仲良かっただろうなあ。「いかにほめやそされる士大夫であったとて、才覚なくばゴミクソですわ」とかどっちも切り捨ててきそう。マジで怖い。

つーかこのアネゴ、兄貴のこと大好きすぎだろ。
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