元帝1  琉遇のくにの皇帝

文字数 612文字

元帝(げんてい)建業(けんぎょう)での暮らしを送っていた頃、
土着の貴族、顧栄(こえい)に向けて語っていた。

「その方らの地に寄寓していること、
 常々恥ずかしく思っている」

すると顧栄、跪いて言う。

「何を仰いますか。
 臣はこう聞いております。

 王たる者、天下そのものが家である。
 故に(いん)の時代、都は(しゅう)(ごう)洛邑(らくゆう)
 移りゆき、王もまた移り住んだ、と。

 どうか陛下におかれましても、
 遷都についてのご懸念を
 なさり過ぎませぬよう」



元帝始過江,謂顧驃騎曰:「寄人國土,心常懷慚。」榮跪對曰:「臣聞王者以天下為家,是以耿、亳無定處,九鼎遷洛邑。願陛下勿以遷都為念。」

元帝の始めて江を過るに、顧驃騎に謂いて曰く:「人が國土に寄り、心には常に慚じるを懷く」と。榮は跪き對えて曰く:「臣は聞く、王たるは天下を以て家と為し、是を以て耿、亳は定まる處無かりせど、九鼎は洛邑に遷れりと。願わくば陛下にては都を遷せるを以て念ぜるを為す勿れ」と。

(言語29)



顧榮
旧呉系。呉滅亡後洛陽にも行ったが「こっち怖ええや」と即旧呉エリアに戻り、そこで元帝を出迎えることになった。ところで元帝さま即位前に建業入りなさってるので、「はじめて長江を渡った時」で既に「陛下」と呼ばれてるのは微妙にそわりますね。当時の人はどう時系列を認識してたんだろうか。あるいは、ここはもう誰かの持ちだした言い回しが定型文化しているのか。
つーか顧栄さん的には、どう考えても建業が都になってくれたほうが旨味大きいですわよね。
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