祖逖1  祖大将軍大喝す

文字数 861文字

王馬天下を共にす。
そんなことが囁かれていた
時代もありました。

実際のところ、晋の江南移転の功績は
大体のところが
琅邪王氏(ろうやおうし)の功績、とされていた。

元帝(げんてい)としてはこのまま琅邪王氏を
のさばらせてしまえば、それこそ
国家転覆すら起こりかねない、
と戦々恐々。

そのため政権中枢から琅邪王氏の
切り離しを図ったのだが、
これが王敦(おうとん)の逆鱗に触れる。

一応名目としては
「陛下にそんなクソみてえなこと囁いた
 クソどもを排除して朝廷を立て直す!」
でこそあったものの、
実際は元帝をなじる気満々での
反旗を翻した。

「君側の奸を排除しますよ」と、
部下に命じて通告させた王敦。

ところでこの時、あの石勒(せきろく)をビビらせた
当代ナンバーワンの名将、祖逖(そてき)が、
後の任地、寿春(じゅしゅん)には未だ赴かず、
建康(けんこう)にいて、この話を聞いていた。

目を見張り、声を張り上げ、
王敦の部下に言う。

「貴様、あの黒んぼに言っておけ!
 兵を引き上げ、立ち去るがいい!
 ダラダラと居残るようであれば、
 このわしが三千の兵と、槊腳(さくきゃく)を持って
 迎え撃ってくれようぞ!」

うひい、祖将軍やべえ、
ほうほうの態で王敦の元に戻った部下、
このことを王敦に話した。

やっべ、なんでアイツが居残ってんだよ。
慌てて王敦、引き返すのだった。



王大將軍始欲下都處分樹置,先遣參軍告朝廷,諷旨時賢。祖車騎尚未鎮壽春,瞋目厲聲語使人曰:「卿語阿黑:何敢不遜!催攝面去,須臾不爾,我將三千兵,槊腳令上!」王聞之而止。

王大將軍は始め都に下りて處分を樹置せんと欲し、先に參軍を遣わせ朝廷に告げ、旨に時賢を諷ぜしむ。祖車騎は尚お未だ壽春に鎮せずば、目を瞋らせ聲を厲とし、人をして語らしめて曰く:「卿、阿黑に語るべし! 何ぞ敢えて不遜たるや! 催攝し面去すべし、須臾にも爾らざれば、我れ三千兵を將い、槊腳を上らしめん!」と。王は之を聞きて止む。

(豪爽6)



やっべ祖逖さんかっけえ。

ちなみに槊腳は、それそのもので棍棒系の打撃を行う武器だそーです。ただ、「槊」単体で矛みたいな意味にもなるので、そこを踏まえると矛のグリップ、ただし単体でも打撃武器になる、そんな感じでしょうか。
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