謝混2  娘婿探し

文字数 661文字

孝武(こうぶ)さま、娘婿を王珣(おうしゅん)に探させる。

王敦(おうとん)桓温(かんおん)と言った破格の英雄は
 そうそう現れるものでもないな。
 まぁ、現れたら現れたで人の家のことに
 あれこれ口出しをしてきて
 鬱陶しそうではあるが。

 やはり劉惔(りゅうたん)王献之(おうけんし)のごときが
 最も適しているのであろうな」

そこそこの人材、と言う仰せに、
王珣が推薦したのは謝混(しゃこん)だった。
謝安(しゃあん)の孫で、晋の軍権を担う謝琰(しゃえん)の息子。

その評価は劉惔ほどではないが、
王献之とは張る、と言ったもの。

この提案を孝武さまが気に入り、
婚約の話が進む。

一方袁喬(えんきょう)の孫袁山松(えんさんしょう)は、この話を知らず、
謝混に自分の娘を嫁がせようとした。

すると、王珣が言う。

「きみ、天子のお手付きに
 手を出すものではないよ」



孝武屬王珣求女壻曰:「王敦桓溫磊砢之流、既不可復得。且小如意、亦好豫人家事。酷非所。須正如真長、子敬、比最佳。」珣舉謝混。後袁山松欲擬謝婚。王曰:「卿莫近禁臠」

孝武は王珣に屬して女壻を求めさしめて曰く「王敦や桓溫なる磊砢の流は既にして復た得べからざるべし。且つ小しくも意に如かれば、亦た人の家の事に好みて豫かる。酷だ須うる所に非ず。正に真長や子敬、比の如きを最も佳しとす」と。珣は謝混を舉ぐ。後に袁山松は謝に婚を擬せんと欲す。王は曰く「卿は禁臠に近づく莫れ」と。

(排調60)



王献之
書聖王羲之(おうぎし)の五男。兄弟の中では最も筆力が高く、王羲之と並んで書人ランクトップと称される。王羲之の落書きをひっそり消して書き直したら「ん、これを書いた時の私はずいぶん酔っぱらっていたようだな。私の字にしてはずいぶん下手だ」などと言われて凹まされてもいる。
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