桓沖1  後見人、桓沖

文字数 677文字

桓温(かんおん)さまが亡くなった時、
後継者の桓玄(かんげん)はわずか五歳であった。
そのため、その後見に桓沖(かんちゅう)がついた。

一通りの服喪が済んでから、
桓温さまの府で勤務していた者は
解散することとなった。

桓玄、桓冲と共に彼らを見送る。
すると桓沖、彼らを指さして言った。

「覚えておけ、霊宝(れいほう)
 彼らは皆、君の家に
 忠誠を誓った者たちだ」

それを聞き、桓玄は慟哭。
かれのこの様子を、
誰もが痛ましく感じるのだった。

さて、それから淝水(ひすい)の戦いの直後、
死亡するまでの間。
桓沖は自らの職務室を眺め、
常にこう語っていた。

「霊宝が成人した暁には、
 この部屋は、かれに返却するのだ」

その寵愛ぶりは、
自らの息子たちを
はるかにしのぐものであった。



桓宣武薨、桓南郡年五歲。服始除、桓車騎與送故文武別。因指語南郡:「此、皆汝家故吏佐。」玄應聲慟哭、酸感傍人。車騎每自目己坐曰:「靈寶成人、當以此坐還之。」鞠愛過於所生。

桓宣武の薨ぜるに、桓南郡は年五歲なり。服せるの始めて除かるに、桓車騎は與に故の文武を送りて別る。因りて指して南郡に語るらく「此れ皆な汝が家の故の吏佐なり」と。玄は聲に應じ慟哭し、傍の人をして酸感せしむ。車騎は每に自ら己が坐を目して曰く「靈寶の成人さるに、當に以て此の坐を之に還ぜるべし」と。鞠愛せるは所生に過ぎたり。

(夙惠7)



桓沖の振る舞いが「今は雌伏の時だ、後々これが全てお前のものになる」と言う感じになっています。つまり世説新語の解釈は「晋は将来桓玄のものだから、いまはぶっ壊さないためにも謝安に協力する」的な感じなんですね。そうであってもエモいし、そうでなくてもエモい。どう転んでも桓沖はエモい。
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