郗超3  淝水前夜

文字数 712文字

郗超(ちちょう)謝玄(しゃげん)の仲は最悪である。

さて、苻堅(ふけん)襄陽(じょうよう)周辺を陥落、
いよいよ淝水(ひすい)へと接近していた時のこと。

対苻堅の軍の大将に、謝安(しゃあん)さまが
抜擢したのは、甥の謝玄。
この決断に対し、人々は賛否両論であった。

が、そんな中で郗超は言う。

「あれはやり遂げるぞ。
 桓温(かんおん)さまの幕僚として共にあったが、
 奴の人を使う才は抜きん出ていた。
 草履もちにさえ
 適切な任務を与えていたほどだからな。

 奴に大権を与えたのだ。
 いかに大軍であろうとも、
 奴は見事に率い切り、
 大功を挙げるだろう」

郗超の予見通り、謝玄は淝水で大勝。

このニュースを聞いた人々は、
郗超の分析能力と、
また自分の感情と人物評価とを
完全に切り分け、
適切な評価を下す態度に感嘆した。



郗超與謝玄不善。符堅將問晉鼎,既已狼噬梁、岐,又虎視淮陰矣。于時朝議遣玄北討,人間頗有異同之論。唯超曰:「是必濟事。吾昔嘗與共在桓宣武府,見使才皆盡,雖履屐之間,亦得其任。以此推之,容必能立勳。」元功既舉,時人咸嘆超之先覺,又重其不以愛憎匿善。

郗超と謝玄とは善からず。符堅の將に晉の鼎を問わんとせるに、既に已にして梁岐を狼噬し、又た淮陰を虎視す。時の朝議は玄を遣じて北討せしめんとす。人間に頗る異同の論有り。唯だ超のみは曰く「是れ必濟の事なり。吾れ昔に、嘗て桓宣武が府に共に在り、才を皆な盡く使い、履屐の間と雖も、亦た其の任を得たるを見る。此れを以て之の容を推すに、必ずや能く勳を立てん」と。元功の既に舉ぐるに、時の人は咸な超の先なる覺えを、又た重んぜるに其の愛憎を以て善かりきを匿さざるに嘆ず。

(識鑒22)



郗超さんカッコヨを決定づける案件。というかこの人のこのいちいちお目が高いっぷりはいったい何なんでしょうね。
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