三呉の顕姓
文字数 1,800文字
どの地にも、有名な家門があるものだ。
例えば呉 のエリアでは、この四姓。
文学の張 氏。
武門の朱 氏。
忠貞の陸 氏。
厚遇の顧 氏。
実際のところ、三國志 における呉も、
本拠地建業 は「呉」のエリアから
離れているのにもかかわらず、
その国名を名乗っている。
呉の四姓の勢力が
どれだけすごかったのか、
それを占えよう、と言うものだ。
似たような感じで、呉の南、会稽 にも
有名な四つの家門があった。
孔 、魏 、虞 、謝 の四氏だ。
あ、ちなみに会稽 謝氏は
陳郡 謝氏とは別系統の家門である。
この四氏については、
孫綽 さんがコメントしている。
孫綽さんと同時代のひと、
孔沈 、魏顗 、虞球 、虞存 、謝奉
をつかまえてのコメントだ。
「孔沈は孔家にとっての、金銀。
魏顗は魏家にとっての、宝玉。
虞家は虞存と虞球を主と見、
謝家は謝奉を尊崇している」
ところで彼らのうち孔沈には、
こんなエピソードがある。
孔沈、またいとこの孔担 から
革製のジャケットを譲られた。
が、孔沈、これを固辞。
すると孔坦に言われる。
「お前な、あの倹約家で知られる晏嬰 、
先祖にささげる供え物のブタの肩肉を
器にちょこんとしか載せない人でも、
狐皮のジャケットを
数十年と着込んでいたんだ。
お前だってそう言うものを、
一枚は持っておくべきじゃないか？」
そう言われて、ようやく孔沈は
ジャケットを受け取り、着用した。
また魏顗と虞存には絡みがある。
あわせて紹介しておこう。
魏顗、雅やかな人ではあったが、
学問はやや不得手だった。
そんな魏顗がいよいよ仕官、
という事になった。
あの学に乏しい魏顗が、だ。
そんな魏顗を、虞存があざ笑う。
「三つのルールを決めよう。
清談しようとしたら死。
文章を書けば禁固。
人を評したらむち打ちだ！」
お前がその辺をすれば、
そのくらい恥ずかしい思いをするぞ、
というわけだ。
それを聞いた魏顗、
ふふっと笑うだけだった。
それと、謝奉と魏氏のエピソードもある。
謝奉と、魏陰 ・魏逿 兄弟。
幼くして聡明であった魏兄弟が
三歳か四歳ごろに謝奉の家を訪問、
共に語らった。
するとその聡明さに打たれた謝奉、
思わず大喜びしながら、語る。
「今、魏氏は落ち目であった。
その魏氏に、
このような人材が現れたとは！」
吳四姓舊目云：「張文、朱武、陸忠、顧厚。」
吳の四姓を舊なるは目して云えらく：「張は文、朱は武、陸は忠、顧は厚」と。
（賞譽142）
會稽孔沈、魏顗、虞球、虞存、謝奉，並是四族之俊，于時之桀。孫興公目之曰：「沈為孔家金，顗為魏家玉，虞為長、琳宗，謝為弘道伏。」
會稽の孔沈、魏顗、虞球、虞存、謝奉は、並べて是れ四族の俊にして時の桀なり。孫興公は之を目して曰く：「沈は孔家が金と為り、顗は魏家が玉と為り、虞は長、琳宗と謝は弘道に伏したるを為さん」と。
（賞譽85）
魏長齊雅有體量，而才學非所經。初宦當出，虞存嘲之曰：「與卿約法三章：談者死，文筆者刑，商略抵罪。」魏怡然而笑，無忤於色。
魏長齊は雅を體量に有せど、才學は經る所に非ず。初に宦じ當に出でんとせるに、虞存は之を嘲いて曰く：「卿と法三章を約さん。談ざば死、文筆さば刑、商略さば罪に抵す」と。魏は怡然として笑い、色に忤り無し。
（排調48）
孔廷尉以裘與從弟沈，沈辭不受。廷尉曰：「晏平仲之儉，祠其先人，豚肩不掩豆，猶狐裘數十年，卿復何辭此？」於是受而服之。
孔廷尉は裘を以て從弟の沈に與えど、沈は辭して受けず。廷尉は曰く：「晏平仲の儉なるは、其の先人を祠るに、豚肩は豆を掩わざるも、猶お狐が裘を數十年す、卿は復た何の此を辭したるか？」と。是に於いて受けて之を服す。
（言語44）
魏隱兄弟，少有學義，總角詣謝奉。奉與語，大說之，曰：「大宗雖衰，魏氏已復有人。」
魏隱兄弟は少きに學義有り、總角にして謝奉を詣づ。奉は與に語り、大いに之に說び、曰く：「大宗は衰えたりと雖も、魏氏には已に復た人有り」と。
（賞譽112）
晏嬰
春秋時代を代表する名宰相の一人。代々の斉公に仕え、斉を強国にした。そんなかれがめっちゃ倹約家であること、そんな彼でもジャケット一枚は持っていた、として、公坦さん、頑張って自尊心をくすぐったわけだ。孔沈もだいぶめんどくさそうな人ではある。
法三章
劉邦 が漢を打ち立てた時に真っ先に言ったこと。殺したら殺す、ケガさせたり盗みを働いたら罪に問う。それ以外の旧来の罰則はいったんなし。そんな感じの内容だ。虞存、その辺に引っ掛けて魏顗をおちょってるのである。
例えば
文学の
武門の
忠貞の
厚遇の
実際のところ、
本拠地
離れているのにもかかわらず、
その国名を名乗っている。
呉の四姓の勢力が
どれだけすごかったのか、
それを占えよう、と言うものだ。
似たような感じで、呉の南、
有名な四つの家門があった。
あ、ちなみに
この四氏については、
孫綽さんと同時代のひと、
をつかまえてのコメントだ。
「孔沈は孔家にとっての、金銀。
魏顗は魏家にとっての、宝玉。
虞家は虞存と虞球を主と見、
謝家は謝奉を尊崇している」
ところで彼らのうち孔沈には、
こんなエピソードがある。
孔沈、またいとこの
革製のジャケットを譲られた。
が、孔沈、これを固辞。
すると孔坦に言われる。
「お前な、あの倹約家で知られる
先祖にささげる供え物のブタの肩肉を
器にちょこんとしか載せない人でも、
狐皮のジャケットを
数十年と着込んでいたんだ。
お前だってそう言うものを、
一枚は持っておくべきじゃないか？」
そう言われて、ようやく孔沈は
ジャケットを受け取り、着用した。
また魏顗と虞存には絡みがある。
あわせて紹介しておこう。
魏顗、雅やかな人ではあったが、
学問はやや不得手だった。
そんな魏顗がいよいよ仕官、
という事になった。
あの学に乏しい魏顗が、だ。
そんな魏顗を、虞存があざ笑う。
「三つのルールを決めよう。
清談しようとしたら死。
文章を書けば禁固。
人を評したらむち打ちだ！」
お前がその辺をすれば、
そのくらい恥ずかしい思いをするぞ、
というわけだ。
それを聞いた魏顗、
ふふっと笑うだけだった。
それと、謝奉と魏氏のエピソードもある。
謝奉と、
幼くして聡明であった魏兄弟が
三歳か四歳ごろに謝奉の家を訪問、
共に語らった。
するとその聡明さに打たれた謝奉、
思わず大喜びしながら、語る。
「今、魏氏は落ち目であった。
その魏氏に、
このような人材が現れたとは！」
吳四姓舊目云：「張文、朱武、陸忠、顧厚。」
吳の四姓を舊なるは目して云えらく：「張は文、朱は武、陸は忠、顧は厚」と。
（賞譽142）
會稽孔沈、魏顗、虞球、虞存、謝奉，並是四族之俊，于時之桀。孫興公目之曰：「沈為孔家金，顗為魏家玉，虞為長、琳宗，謝為弘道伏。」
會稽の孔沈、魏顗、虞球、虞存、謝奉は、並べて是れ四族の俊にして時の桀なり。孫興公は之を目して曰く：「沈は孔家が金と為り、顗は魏家が玉と為り、虞は長、琳宗と謝は弘道に伏したるを為さん」と。
（賞譽85）
魏長齊雅有體量，而才學非所經。初宦當出，虞存嘲之曰：「與卿約法三章：談者死，文筆者刑，商略抵罪。」魏怡然而笑，無忤於色。
魏長齊は雅を體量に有せど、才學は經る所に非ず。初に宦じ當に出でんとせるに、虞存は之を嘲いて曰く：「卿と法三章を約さん。談ざば死、文筆さば刑、商略さば罪に抵す」と。魏は怡然として笑い、色に忤り無し。
（排調48）
孔廷尉以裘與從弟沈，沈辭不受。廷尉曰：「晏平仲之儉，祠其先人，豚肩不掩豆，猶狐裘數十年，卿復何辭此？」於是受而服之。
孔廷尉は裘を以て從弟の沈に與えど、沈は辭して受けず。廷尉は曰く：「晏平仲の儉なるは、其の先人を祠るに、豚肩は豆を掩わざるも、猶お狐が裘を數十年す、卿は復た何の此を辭したるか？」と。是に於いて受けて之を服す。
（言語44）
魏隱兄弟，少有學義，總角詣謝奉。奉與語，大說之，曰：「大宗雖衰，魏氏已復有人。」
魏隱兄弟は少きに學義有り、總角にして謝奉を詣づ。奉は與に語り、大いに之に說び、曰く：「大宗は衰えたりと雖も、魏氏には已に復た人有り」と。
（賞譽112）
晏嬰
春秋時代を代表する名宰相の一人。代々の斉公に仕え、斉を強国にした。そんなかれがめっちゃ倹約家であること、そんな彼でもジャケット一枚は持っていた、として、公坦さん、頑張って自尊心をくすぐったわけだ。孔沈もだいぶめんどくさそうな人ではある。
法三章
