王戎11 時に羈紲さる

文字数 570文字

竹林七賢(ちくりんしちけん)
ほぼ亡くなってしまった後の話だ。

王戎(おうじゅう)尚書令(しょうしょれい)
要するに官房長官レベルの
ポストにまで昇進した。

王戎、公務で移動中していた時、
黃公(こうこう)という場所にある酒場の下を通った。

王戎、ふと後ろに向き、
後続の車に乗っていたひとに言う。

「昔、あそこで嵇康(けいこう)阮籍(げんせき)
 酒を飲んだものさ。
 彼らには、竹林の遊びでも
 構ってもらえたりした。

 が、嵆康が殺され、阮籍が死に。
 いまとなっては、すっかり
 世俗のしがらみに
 縛られる身の上となった。

 あの場所とて
 足を運べんわけでもないが、
 いまとなっては、
 はるか山河の彼方のようにも
 思えてならん」



王濬沖為尚書令,著公服,乘軺車,經黃公酒壚下過,顧謂後車客:「吾昔與嵇叔夜、阮嗣宗共酣飲於此壚,竹林之遊,亦預其末。自嵇生夭、阮公亡以來,便為時所羈紲。今日視此雖近,邈若山河。」

王濬沖の尚書令為るに、公服を著け、軺車に乘り、黃公が酒壚の下を經て過ぐるに、顧て後ろの車客に謂えらく:「吾、昔に嵇叔夜、阮嗣宗と共に此の壚にて酣飲し、竹林の遊にても、亦た其の末に預りたり。嵇生の夭し、阮公の亡くなりてより以來、便ち時に羈紲さる所為たらん。今日に此を視るに、近かりしと雖も、邈なること山河の若し」と。

(傷逝2)



黄金時代は、遥かな彼方。このエピソードは、竹林七賢たちが歴史のかなたに消え去ってしまったことを痛感させられます。
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