第15話 転換

文字数 521文字

 負い目を感じ、生涯をかけて償う事は、
私の負うた十字架。 息子は
大学を出て、三年大手の電気メーカーに勤務した後、
たっての本人の希望でアメリカに1年遊学した。

 帰国して再就職したら、万歳だ。
ところが、就職もせずニートを始めた。
忠告を聞く耳はどこかにおいたままだ。
このままだと婚期を逸してしまう。
  
この子を乳幼児の時に犠牲にして
家族は生き延び、立ち上がったのだ。
その負があるから、
償う心で今まで、わがままを通させた。
それがいけない。
それは「愛」でないかもしれない。
 神戸で就職した。
ほっとしたのも束の間。
阪神、淡路の大震災に遭遇した。
勤務先が大被害をうけて自宅待機。

待機中に退職。またニート。
説き伏せてやっとの思いで帰郷させる。

カー付き家つき、ババ付きではさまにならない。
彼女ができたらしいと悟る。

 やれやれとホームへ申し込んだ。
息子は現状のままで良い。
ホームに入ることを承知しない。
「お母さんの好きにさせてあげよう」
彼女の言葉に救われて
私はホームに入る事に決めた。

 思いが叶ってゆくホームなのに
この胸の切なさはどうしてだろう。
 机上の空論は役に立たない。
 人間何事も直面しなくては
 真の事はわからない。




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