第31話 秋立つ

文字数 505文字

 朝夕のさやけき風は秋です。
北窓の下の鉢の蛍がや(縞茅)が穂を出し揃えました。
きた窓といえども朝の1時間くらいは陽はさします。
限られた時間、陽を精一杯受けてススキの穂は白く輝きます。
ささやかなこの朝のトキメキに似た感情は1日の幸せを予感
させます。この暑さに早やススキの穂が出揃いましたと、言
えば嘘、本当と聞かれそうなので何枚も写真に収めました。

 1日が終わるころ、風の道が生まれススキの穂が揺れています。
一株1平方メートルもあるだろうか、素晴らしい一群れです。
出遅れて少し小さくても、分相応というのでしょうか。
己に合わせてススキは小さい穂を出しています。
山裾の野生のススキには穂の出る前兆もありません。早生と
晩生の違いでしょうか。

 油蝉の声を聞かなくなりました。季の流れの中で、生きる短い
蝉の生涯に想いを馳せ「生者必滅…」が脳裏をよぎりました。

 蝉と虫が勢力交代し、夜を待ち兼ねて窓の下で「コロコロ」
と鳴いています。
 野に出れば合唱が聞けると期待して出かけましたが、
どうしたのでしょう。鳴いているのは私の坪庭だけです。
 不思議な「コーロギ」との縁に感動しています。
 そのうち「スイッチヨン」も聞こえるでしょう。




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