第49話 日々新たなり

文字数 782文字

 終の住処で暮らして四週間が、あれよ、あれよと言う間に過ぎた。
日当たりが良好なので、天気のよい日は一日中で薄着で暮らしている。
 夕方息子が迎えにきて、昔の我が家へ帰った。他に来客もあり大勢で
日本シリーズをTV観戦した。理由もないが野球から遠のいていたから、
新々の顔ぶれも名前もほとんど知らない。客人が、オリックスファン
だったので、流れに沿って応援した。久しぶりのTVの野球観戦だったが、
心に残るいい試合だった。

 1年間いや幾年もの努力の結晶だろう。泣く者、笑い合う者、いつも勝者
は華々しい。ヤクルトおめでとう。オリックス残念だったがよく頑張ったね。
明日という日があるよ。「来年また楽しませてね」

 息子の少年野球の日々を思い出している。
「おかん、この3ケ月の流れは夢の中だったかもしれないよ」と、息子は曰く
「つねっても痛いし、貯金も減ったし夢じゃあない。紛れもない現よ」
「長い夢で今も夢の中の会話だとしたら」
「夢なら夢で良い。良い夢をありがとう。と喜んで受け入れるわ」

 照る日も曇る日も、それなりに幸せに暮らしている。ありがたいことだ。
今がよければよい。明日は明日の風が吹く。風を感じてから道を考えよう。

 3カ月前に後にした住み慣れたあばらや。あの家はもう自分の家ではない
のに、泊まりに帰ったらほっとして落ち着く。
 風呂の入り心地もいいし、夜もぐっすり眠れる。お気に入りの終の住処が
できたというのにどうなっているのか。故郷感覚だろうか?
 そうだ。息子の家は第2の故郷としておこう。

 その故郷の花畑は、手入れが不良で、綺麗な菊のほとんどは退化してしまった。
水仙が綻びだしたので長い間、咲いていた秋桜を切った。ほうれん草に隠れて冬の
草が根付いている。ちっとだけよと草抜きをしたら、見た目も少し綺麗になった。
 流れる風も畑の色も季節はもう冬なのだ。
 明日も天気になーれ。

 

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