第25話 泥棒侵入(1)

文字数 505文字

 引き越して間も無くのこと。
東側の掃き出し窓をみな開けっ放して、
2時間外出した。この面は隣りと隣接していて
外からは見えにくいし、坪庭があるから、いつも
開けている。

 外から帰って空気の乱れというか、何か違和感あり。
玄関の部屋を開けた。異常なし。次の部屋を除く。

 おかしい。右側を開ける習性があるのに左側が開いている。
「あれ」県外に居る息子でも帰ったのかなと窓までゆく。
沓脱石に靴がある。やっぱり息子だ。

「健、健」と言いながら二階へ上がった。
踊り場から部屋に入る後影をチラッと見た。

「まあ大人気ない私を揶揄っているわ」
踊り場まで上がった所で、部屋に隠れていた
息子ならぬ泥棒と鉢合わせした。

 私より少し若そうな小さいお爺さんだった。
「これは大事ない」直感したのだろう。
飛びついていた。

「泥棒。泥棒だ」叫びながら格闘。
何といっても普段から声が大きい。
「ワシは何も取っとらん」小さい声で言う。
格闘を逃れて階段を降りた泥棒は余裕だ。
ちゃんと靴を履いて出ていった。

家の外には十人ものひとだまりが出来ていた。
しかし、誰一人、飛び込んでくる人はいなかった。

 「泥棒」と言わずに「火事だ」と
叫ぶのか現代の常識であると後から知った。


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