第8話 夏の日

文字数 446文字

 田の草とりも終わり、一段落ついたころ。
一夏に一度だけ、家族で川遊びをする。
貝殻に穴を開け棕櫚縄で繋ぎ、
ごろ(捕魚器)にジンゾクを追い込む。
 左右の端を父と兄が引く。だんだん狭めて
いって大包みに魚を追い込むのである。
 弟と私は遊軍であって、ゴロがスムーズに
引けるように、邪魔な小石を取り除いたり
ジンゾクが、ごろから逃げないように、
つまり後方で、ジャボ、ジャボしている。
 包囲網が縮まって行く。
ついに父が大包みを上げた。八っつのまなこが
大包みに集中した一瞬である。
ジンゾク、小海老、ドジョウも跳ねていた。
井戸水で綺麗に洗い、醤油をふりかせる。
びっくりして口を開けるから瞬時に砂を吐き出す。
祖母がそのように話していた。

 鰻も竹の筒で捕獲していた。
鰻丼に次ぐジンゾク丼も美味だった。

 また、針金で輪を作り、
蜘蛛の糸を絡ませ、網の代用として
セミを取った。麦わらで編んだ虫かごへ
入れたが、すぐ昇天した。
 登校しなくてよい。勉強しなくてよい。
しかし、昆虫採取の宿題があった。
 それでも夏休みは好きだった。

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