第42話 ハッハッハと笑う

文字数 820文字

 秋の夜長。なすこともなくテレビのスイッチを入れる。
ぽつんと一軒家らしい。山あいの森の中に少し開けた空間
が見える。そこにぽつんと家がある。

 高知県と徳島県の県境、標高800メートルのところに
自給自足で一人で住んでいる94歳の女性(名前を失念)
矍鑠としてカメラマンに山の幸を馳走。何を言っても笑顔で、
ハッハッハと笑っていた快女。

 同じくさらに山を登ったところに住む「ダイイハナ」さん
84歳は、ぜんまいをとり加工して出荷していると言う。
加工場には、大きな釜と乾燥機を備えていた。
仕上がった製品は、1キロ9000円で農協へ卸すそうだ。
それが安いか、高いかはわからないけど、貴重である事は確か。

 軽トラックで断崖絶壁の道を走り5キロのゼンマイを軽々と
背負って傾斜の道を登る。10キロくらいなら持てますよ。
涼しい顔をして語る。
 
 夢や希望を持って生きている。老いどころか青春を漂わせていた。

 傾斜地で地を這うようにしてゼンマイを取っていた(ハナ)さんに
寒村に暮らした祖母を重ねて、胸を熱くして見ていた。

 さらに山を登った所に100歳のお婆さんが自給自足で暮らしていた。
おばあさんの名はひろこ「尋」と言った。ひろこさんは旧制の郵政局か、
省に勤めていたと言う。スマホを使っているのには驚いた。
 山の中の一軒家とは思えない立派な家で、家宝という巻物は無造作に
風呂敷に包まれていた。先祖は平家の落人であるとも語った。
軒にある家紋は平家の隠れ里を密かに象徴しているか?

 記憶違いで少々前後したかもしれないが、私の書きたいのは、
三人のご尊姆?から共通して伝わってくる明るさ、笑顔、笑い声である。
特に笑い声はハッハッハと、腹の底から体全体で声を出して笑っている。
屈託のないあの笑い声は長寿の源かしれない。

 長生きの秘訣の問いに。
空気がいい。心配事がない。平和である。もう十分生きた。
私は満足している。ハッハッハ。

 快女から多くを学んだ。私は、ワッハッハと生きよう。









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