第26話 泥棒(2)

文字数 479文字

 泥棒は家を出てしばらく逃げて路上で捕まった。
刃物でなく傘を振り回していたが、男性3人に押さえられ、
あっけない幕切れだったという。

 空き巣の去った我が家はてんやわんや。
次々と警察が来る。新聞社も来る。顔が変わる度、
事情を事細かく聞く。
知る所によると、隣の地区で空き巣が多発していて、
マークしていた爺さんだという。
この日は小雨が降っていたから、警察はまさかと
油断していたらしい。

 繰り返し同じ返事をしていたが、うんざりしてきた。  
「もう同じことを話すのはいや。駐在さんに聞いて」

  その後、警察から二人を表彰することにした旨
連絡があった。

3人が同時に協力したのになぜ2人?
「当方の予算も事情もあり、もう決定したことですから」
外されたのは隣のお爺さんだった。
「それは困る。それなら二人の表彰は中止して」
一悶着の末、3人並んで表彰された。
「儂ゃこんなこと初めてだ」隣の爺さんは喜んでいた。

娘から電話があり
「どろさんが刃物をもっいたらどするのよ。
そんな時は、腰を抜かすも」と宣う。
「抜けんかったんだからしようないでしょう」
 
 盗られるものは何もない。被害は零。




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