第4話 昭和は遠く(1)

文字数 377文字

 昭和一桁生まれは、どっこいまだ健在である。
旭ケ丸を仰ぎ園瀬の川の清流に戯れて、
やがて卒寿を迎えようとしている。
絵にも、物語にもなる我が人生。拾い描きしよう。
自然の懐に抱かれて、不足すら不足と知らず、
ありのままが、当たり前に育った。藁葺き屋根の下で
銀飯など数えるほどしか食べたことがなかった。

 お正月にはそれなりに伝承された行事があり、
粛々と若水汲みから一年が始まった。
 紋付を着た父は井戸に向かい。提灯を持った祖母が
続き、その後に兄弟が従う。(母は既に旅立っていた)
「お父さんおめでとうございます」
序列に従い順次挨拶を交わす。
 お年玉は、使わずに手製の竹の貯金箱に預けた。
 その頃はよく雪が降った。積雪の朝は一番に庭に
飛び出す。自由に二の字を付けて自然を征服した気分。
 校庭ではでは手袋も穿かずに雪合戦に興じた。
 手袋は既に品薄であったのかもしれない。

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