第96話 立場変われば

文字数 566文字

 完全に車を手放して半年。
不便さには慣れないが、諦めて慣れるより他ない。
猛暑の間、微熱が続いてほとんど外出していない。が、かかりつけ医
や、歯科、眼科、その他、受診の時は、バスか近くは徒歩でゆく。

 今まで気がつかなかったが、歩いてみると歩行者には不都合なことが
多々ある。歩道は排水溝まで傾斜があるのだ。車道に近い白線の内側を
歩けば良いのだろうけど、車道はそこのけ、そこのけと車が走る。
そこで転んだら、みんなに迷惑をかける。仕方なく傾斜のある排水溝の
近くの歩道を歩く。排水溝の上は平らなので、その上を歩く事もある。
が、ここも凸凹していて安定は悪い。その上暑くてもしっかりマスク
をしていないと、何か匂ってくる。

 幼稚園の一団が通った。付き添いの先生がもっと、もっと右へよってと
車道から遠ざけて傾斜のある方へ誘導している。子供は身も軽いから少し
ぐらいの傾斜は、どうってことはないかもしれない。

 左側に2輪、人を見ると走り辛かったが、歩行者の思いなど考えても
いなかった。今頃になって、自分本位だった己を知る。立ち位置が変われば
思いも極端に変わる。
「お母は強いから、弱者の気持ちはわからんわ」息子の言葉を今
噛み締めている。
弱者になって見て、当たり前のことが、当たりまえでないことに気がつく。

 歩け、あるけと言うけれど公道には危険がいっぱいある。


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