第94話 ある日の走り書きから

文字数 605文字

 ノートを整理していたら、今、気がついたと書いた殴り書きが出てきた。
台所の片付けもせず新聞を広げる。一面に航空路線、人口減少、コロナ禍
拡大のニュースの後に「吉川真人、芥川賞受賞のエッセー」を読む。
何か閃くものを感じた。閃いたのではない、胸騒ぎがした。何かを掴んだようだ。
 そこにはあれも、これも書いていない。書かんとすることを流れるように書いてある。
雨であろうと、風が吹こうと己を中にして書かんとする一点が書いてある。

 前に進んでいるかに書いて右方向へ、そうかと思えば左に寄っている。己の書に嫌気
がさした。沈黙は金、雄弁は銀の言葉を咀嚼してみる。多くを語る不必要性を知る。

 2/2/13日、五木寛之より。右往しつつ生きる。右へゆけと言う人あれば、いや
左だと言う人あり、その時は自分の信念に従うしかない。常日頃自分の体との対話を怠
ない人は、体の声が聞こえるはずだ。その声に迷わず従う。間違っていれば自分で責任
を取ればいいではないか。体は時として嘘をつく。惑わされないようにするのも経験である。
自分の体の声に耳を澄ませて生きていると、その辺が微妙に分かるようになってくるだろう。

 上記の一文が、気になったのか、気に入ったのか書き連ねている。その時はきっと、
そうだ、そうだ。と肝に銘じたのだろうけど、それっきり忘却、仕っている。

 己の心の、体の声を聞く耳持とう。
 反省の声が聞けたら、老後がもっと楽しくなるだろう。




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