第67話 人それぞれ

文字数 583文字

 転居してから市バスを使うことが多くなった。
時間表はあるが、4~5分、遅れることはあっても
バスは早く来ることはまずない。

 発車した。発車しようとしたバスを後から追うことは
100%無駄である。非は自動車でなく、こちらにある。
 前で自動車を捕らえた時は、バス停で待ってくれる。 
運転手によってはダメ、ダメと手を振って発進する。

ギヤーを入れているのだろうと思うから仕方のないことだ。

 杖をついた私以上の老婆が前から転げる様に来る。
バスは待っていて、おばあさんは乗車できた。
「ありがとう」お婆さんは感謝した。

乗り合わせた私は
「運転手さんありがとう」心になにかが灯った。

 昨日、出先からの帰り、時間も確かめずにバス停へゆく。
あゝ、十分前に通過している。あと20分立てって待つには
長いし、寒いと、囲いの中に入って腰掛けた。
ところが、すぐバスが通過した。この時間帯にはバスは来ない
はずだ。がと、飛び出した。

 囲いの中の人間を視野に捉え、行きすぎてストップしたのだ。
停留所に立っていないのだから、行きすぎて当然。
バスは事情があって遅れたようだ。

「すみません。ありがとうございます」
「今度から外で待っとってな」
「はいそうします」
運転手の機転と好意のお陰で待たずに乗車することができた。

 窓の下をいろいろなバスが一日中行きつ、戻りつしている。
 今日もまたまざまな物語を運んでバスは行く。



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