第107話 老いは悲しからずや

文字数 674文字

 マンションの風呂は深くて、窓がないから使いたくない。
大きな窓があり、庭のみどりもほしいままに見え、窓の下をゆく
旅人の話し声まで聞こえた。湯船に浸かってホッとした去った時が懐かしい。
無い物ねだりは己らしくないと、時々、駅前のSホテルにゆく。
風呂の後、一人のランチが流れになっている昨今。

 昨日、風呂の道具をリュック入れ、ランチの後マッサージへゆく予定
だったが、ホテルのエレベーターの乗り場に30日と31日は改装のため
温泉は臨時休業の張り紙。がっかりして、どこもよらず引き返した。
こんな時、昔はすぐ変更や対応ができたのに、今はただ戻るしか脳が働かない。
老いるとは、悲しいものである。今日もマッサージのゆくためバス停へ
駅を11時15分に出るから、私も同じ時刻に家を出たらちょうど良い。
バスは定刻より早くきた。おかしいなと思いつつ乗った。アナウンスを聞いて
「違った」と次のバス停で飛び降りた。おかしいと思ったのだから、確かめるべき。
わかっちゃいるけど、それができない。老いとは侘しいものよ。
 11月からディケアセンタへ週1回行っている。センターには、いろいろな人が
いて、さまざまな人間模様を垣間見る。「ジャンケンポン」の、リーダーがいる。
リーダーはどこにいても光る。運動しても、可もない不可もない話であっても、
女史は、正面向いて真剣に聞いている。反省させられることいくたびか。
「ジャンケンポン」のように喉ちんこ出して大笑いすることは許されないが、
一日、同じ飯を食み同じ空気を吸っていることに、いまは意義を感じている。
 H女史の存在はやはり、大きくて重い。





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