第10話 冬の日

文字数 417文字

 短い冬の日は夜なべをする。
夜なべは家中全員出動して、
茹で干し(干し芋)を作る。
 祖母が切る。父は穴を開ける。
子供たちは穴の開いた芋を藁に通す。
素晴らしい流れ作業だ。
 翌日、茹でて軒の下に吊るす。
 芋の暖簾である。
寒風を受けて暖簾は程よく乾燥。

 旧暦十月の亥の日は(お亥の子さん)
餅をついた。二回目の亥の日には炬燵
の口あけをした。
素焼きの大きな黒い炬燵だった。
埋み火で布団はほんわか。心も温まる。

 外は吹雪の夜。囲炉裏を囲んで、団子や
芋を焼く。焔は貧しさを暖かく、包む。
囲炉裏のある部屋を茶の間という。
茶の間の天井は煤で真っ黒だった。
 貧しいながら、家庭は平和であった。

 冠雪を見ると父は鉄砲を持って猪狩りに行く。
タンクズボンに巻き脚絆の出立ちだった。
その巻き脚絆を弟と競争で巻いた。
硬く巻けたら「おお、硬いのう」褒めてくれた。
一冬に二〜三度猪の肉にありついた。
されど、すき焼き以外食べ方を知らない。
すき焼きは最高の馳走だった。


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