第77話  ひな祭り

文字数 220文字

雨天のひな祭りは嫌だった 
家に籠るから好かなんだ
なんだって床の間にはお軸が
一本かけてあるっきり

遠がすみのひな祭り
遊山箱を持って飛び出した
三段重にはすし菓子にしめ
にしめのまん中にゆで卵

滅多に食せないゆで卵
真ん中の黄が食指をそそる
見るだけよと目で楽しんで
最後に心して食べた

六十路きて己がために
買った小さなおひなさん
いそいそとひな開きをした
客は雛うたを歌って去んだ

やがてくる卒寿
己がことするだけで目一杯
ごめんなと別れを惜しんで
ひいなは殿堂へ入った



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