第134話 あらたまの年

文字数 580文字

 皇紀2684年は明けた。何がめでたい。能登半島を襲った地震。
月の半ばが来てもまだ孤立している地区がある。なにの手伝いも励ましも
できないのに、苦情はいえない。地震国日本、南海トラフはいつ起きても
不思議ではないと、言われ続けている。災害は忘れた頃に来る。
速い話が、常備薬、非常食、水をリュックに詰めて玄関に近いところに置いた。
何度か、中の入れ替えをしたが、今リュックさえどこにあるのか。その内私は
マンションに引っ越したから、ここでは何も用意していない。
 引き越す前、お隣のお婆さんが、「私はもう十分生きたから、津波がきても
逃げない」「そんなこと言われん。そんなこと言ったら、若い人たちが困るけん。
『そうですか。そんなら私たちは逃げますよ』そんなこと息子が言えますか」と
余計なおしゃべりをした。「だから一緒に逃げよう」と話したことを思い出して、
避難所のお年寄りの心情を思い、やるせなくなっている。
 
 その上、大事な友人が一人は難病で入院し、もう一人は忘れ病に罹った。
「あなたはどちらさんと言われて、震えている。明日は何が起こるか未知数。
覚悟はしていたが、しっかり立てないほど、私は今、落ち込んでいる。
支えてくれた二人の存在は大きかったと今頃気がつき、「もどってこいよー」
と祈り、叫んでいる。
「心ここに在らず」ですが、新年おめでとうございます。今年もどうぞよろしく。


ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み