第5話 昭和は遠く(2)

文字数 250文字

 雪が溶け、谷川の水が少しづつまして、
せせらぎが春を奏でる頃。
小径や畦にはたんぽぽ、れんげ草、犬ふぐりが咲く。
犬ふぐりの紫紺の色が無性に好きだ。
あの小さい花を天使の涙と仮想した。それは遠い昔のこと。

 八十八夜には、菩提寺で甘茶が接待された。
祖母と行ったが、母子連れが気になり、不機嫌になった。
農家では茶摘みが始まった。

 その頃村は、総出で、水田用耕作地に水を引くため
川の手入れをした。
 堰を整え苗代を作った。
 自然が目覚めるに従い人間もまた雨季を迎え
忙しくなっていった。
 やがて山には山の幸が溢れる。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み