第32話 ケアハウスのひととき

文字数 617文字

 台風一過爽やかな朝だ。
ケアハウスに入所してやがて2週間
「セカンドハウスのつもりで来てくれたらいいですよ」
それは理想で中々自由に出にくい。コロナ禍の中だから
仕方のないことだ。それでも二度帰っている。大きな声では
言えないがやっぱり我が家が一番だ。

 生活と心境の変化でひとり旅を望まなくなって1年余。
歳を重ねてからのひとり旅は、ホテルで居座って部屋着のまま
暮らすことが多くなっていた。海と空を眺めて。

このハウスも同じである。ランクは落ちるがホテルの延長のよう
なもの、残念ながら海はないが、太陽と雲を満喫している。

 ハウスの朝は7〜8時が食事の時間である。
検温、手洗いのあと自分の席に着く。卓は4人。
飛沫防止策は完璧。食堂に入った順に膳が運ばれてくる。
四肢自由な人は、呼ばれたら自分で運ぶ。

 食堂は静かである。同じテーブルの人たちは小さい声で、
ひそひそ話をする程度。私のテーブルは二人が入院中で
97歳のお婆さんと二人。ところが、そのおばあさん耳が
遠い。無視もできないし、話しても通じない。そこへ持って
きて私は声が高く大きい。漫画でないが、他の人には聞こえ
ているが本人は、頓珍漢な返事をしてくる。
もう気を使わないことにした。ご馳走さま以外無言である。

 今朝は朝食をキャンセルした。時間の制約もないし、胃袋
も休めて快調。パジャマのまま、今、お茶だけ飲んでいる。
朝日は部屋の奥まで入る。冷房をつけてボーッと見る窓の外。
 天高く雲は秋を告げている。








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