第22話 「弱者の気持ち」

文字数 302文字

 ケアハウスは9月2日契約。
7日入居と決まった。
 とうとう出てゆく。
嫌も応もない。荷物を整理しなくては。

 来年もまだ生きているつもりか、
来年の夏服も思案して選んでいる。

 終の住処と覚悟して住んでいた家を
長男に開け渡した時はまだ若かったけど、
悲しいほど寂しかった。

 今度また終の住処を次男に引き渡す。
早々と心の中は秋たちぬである。
 
 小高い丘に赤い屋根の小さな家
建てたかった。夢だった。
長いながい夢だった。夢追うことは
楽しかった。

 出ていくといっても、自分の部屋は
そのままにしてゆく。
2坪の小屋(みどり庵)もそのままにしてゆく。
それでも無性に寂しい。
 
 「弱者の気持ち」よくわかるよと
長男に言ってやりたい。


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