第44話 やっぱり駄目か(1)

文字数 628文字

 私はケアハウスを退所することにした。
10月26日決心をしてその日に伝えた。私は喧嘩を始めたら強いが
普段は内弁慶で駄目人間である。

 退所の意向は次男の嫁がハウスへ伝えてくれた。話し合いも
手続き一斎、私はノータッチ。
 
 第3者として見るのと、現実に入所して暮らすのとでは右と左
ほどの差異がある。覚悟はしていたが、恥ずかしながら私は落伍者。
馴染むことも、挨拶以外会話することもできなかった。コロナに便乗
してか、外部は勿論、内部でも必要以上の交流を認めなかった。
与えられた食事をして後は自室に籠る。
人は知らないけど、私は、生きるためだけに三度の食事をしたに過ぎ
なかった。
「貴女は無理だろう。と思っていましたよ」と主任に言われ、
身内からも、3月は持つまいなあと思われ、言われ、小さくなっている。

「もうたまらん」といえば、
「11月分は10月25日に既に引き落としされている。支払いも済んでいるし
11月中に家に帰ったらいいだろう」と息子。
「いいや1日も早く退所したい。けど、家には帰らん」
「どうして、わがままもほどほどに」
「ワンルームでいいから、借りるなり、買うなりして。私は10月末
には、ケアハウスをどうしても出たい」

 むすこ夫婦に友達も動員して部屋探しが始まった。
 10月29日。部屋が見つかった。
 10月31日。退所と同時に引っ越しをする。
 ひとり良がりで家を出て、みんなに迷惑をかけて申し訳ない。
穴があったら入りたい気分。
しかし、私は少し賢くなった気がする。
 
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み