第78話 復活

文字数 699文字

「明日は久しぶりに木曜会をするから時間があったらどうぞ」と弟に伝えた。
「お寿司には金時豆がたくさん入っとる方がうまいけん」弟は金時豆を持ってきた。
「ヨイショ、コラショ」掛け声と、ともでないと何もできない。
木曜会といっても田舎寿司、豚汁、作り置きの鏑の三杯づけと、香の物だけである。
 器も三人分しかないから、とろとりどりだ。 
「必要なものは言ってくれたら、何でも持ってくるから」と息子
「いらない」
「それなら好きな器を買ったら」
「いらない」
昨年は二度も居を変えた。その度に荷物は最小限にと、肝に銘じているからいらないのだ。
 客人を待っている間に掃除をした。掃除も久しぶりだ。全ての窓を開け放した。
照る日は暖かいが風はまだ少し冷たい。もうすぐ春だ。四温を待とう。
みんな腐っているからと一月にランチして早2カ月が経過した。
「元気になったなぁ」
「重症かと案じたが復活してよかった」
口々に言う。よっぽど腐っていたのだろうか?自分のことは自分が一番よく知っていると
放言していたが、孤独と脆さと弱さのど真ん中で粋がっていたのだ。
故人曰く「日向00」の感否めない。00は老人語である?
 心と体とどちらが先に病んだのだろうか?斜めにかまえていたような気がする。
そんなことはどちらでも良い。今日一日中ことなく過ごせたら良いではないか。
誰かが言ったように、この一瞬がみんな過去になってゆくのだ。
たった今は、未来と過去の僅かな隙間だ。声を出して笑って生きよう。

 桜の開花には何日か早いようだ。
窓の向こうの故郷の山は霞か雲か、ぼんやりしている。
春の霞のような雲の向こう側へ今日の日は隠れた。
陽が落ちると急に冷えてきた。2/26





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