第103話 442年目の天体

文字数 560文字

 犯人を追って夢中で本を読んでいた。
18時過ぎ、電話が鳴った、H女史からである。
「早う見な。月が欠けてゆく」
ああそうだった。東窓へ移動した。今欠け始めたところである。
ほんに欠けたところは真っ黒である。
「太陽と地球と月と天王星が一直線」なるという天体の神秘。
いつの頃からこの星の人は知っていたのだろう。
 戦国時代の442年前は「見たらあかん。目が潰れる。
今に天変地異が起こる『月天さんが』隠れなさった」と、
大騒ぎしたのではないか?

 やれ忙しい。犯人を追いつつ月を眺める。雲はあるが、
月が隠れるほど濃くはない。1時間ほどで隠れたが、最後に
一線になってから、しばらくそのままのように見えた。
隠れたが、月はぼんやり薄く白く最後のところは
赤黒くぼんやり形を残していた。
肉眼では、月に天王星が隠れるところは見えなかった。
 バックする形で月は元の形に戻ると思っていたが、
違った。欠け始めたところから復元した。半月になった頃、
濃い雲の流れに隠され、かくされ、遂に隠されてしまった。
 諦めて犯人を追った。
11時、見上げる空に、月は見えなかった。
次にこの天体の不思議が見えるのは300年の後という。
進化し続けているこの星はどうなっているのだろう❓
あくる朝、5時西の空に15夜の月が輝いていた。
あくる夜、雲ひとつない空に満月のような月が出た。








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