第1話

文字数 1,623文字

 会社で言われた。
 「お前、グレーゾーンだろ?あの車にかわいい女の子乗せるの?はっ。」
 意味が分からない。後で知ったが、同性愛者でしょ?という意味合いだったらしい。
 「だからなんなんだ?業務にそれが必要ですか?必要ないですよね。」
 私が彼に出したコメントだ。
 私の髪はチョー短い。スカートもはかないし、言葉も男っぽい。幼い頃から女らしく、男らしくという線引きが大っ嫌いだ。自分の中でも追及しないかわりに、
 私は、人にもそれを求めない。でも、「社会」を成り立たせるために、「らしさ」が、全く必要ないとは、思わない。「ジェンダー」という、文学/哲学項目があることは、十分存じ上げているが、
個人がそうありたいならあればいい話。強制するものでもされるものでもない。人として人にどう付き合うかしか、日頃から、考えていない。
 最近、雑誌やノンフィクション文学で、「私はカミングアウトしました」という文を目にする。
私からみれば、なぜに、わざわざ公表する?と思う。その行為自体が、「自分を差別対象者だと認めていることにはならないですか?」と。そうであってもなくても、堂々としていればよい。誰に迷惑をかけるわけでもない。隣の家のおじさんが、男性と付き合っていたとする。何が悪い。自己責任で大人が恋愛することって、後ろ指を指されることか?
 子供が出来ない、それには人間の遺伝子を保つうえで、どう転んでも、貢献できない。でも、これも、異性同士の婚姻関係者でも、子供を作らない人/作れない人、いっぱいいるじゃんと、堂々と、駄々をこねさせてもらう。
 私は異質だ。20代、「とても純粋な」男の人にしつこくされて、男の人に興味がなくなった。彼は、同じ会社の人で、物理学科卒、代議士の息子さん、次男という、私から見れば、社会的指数で表現するとすれば、指数が50くらい上の人だった。彼は、私の家のすぐそばに引っ越してきた。帰りを待ち伏せされた。私が、「このドラえもんの時計、かわいいですよね」と、雑誌を見ていると、即座に「買ってあげるよ」と言われた。会社の同僚は、その男の人を、「乙女すぎる」と言っていた。私にとっては、、、重たすぎたのだ。私が、会社から、隠れて走って帰っても、なぜか同じ電車に、彼は乗っていた。
 私が20代から40代にかけては女の人が寄ってきた。街のど真ん中で、名前を呼ばれふりむいた瞬間、友人から、「ぶちゅ~」とされた。唾を吐いて走って逃げた。それが私のファーストキス、19歳。終わった。
 またある日には、コーヒー飲みましょう、と助手席に乗せられた。ある勉強の会合を通して、始めて会った女性の言葉。私の頭にはタリーズにスタバ、ドトールが選択肢としてあった。でも私の横で、運転する女性の頭には、「彼女の部屋」しかなかった。部屋に入るまで、気づかなかった。そういうことだ。帰ってからも数時間、吐き気が止まらなかった。でも、パンツは脱がなかった。
 彼女から、「また会おうね」の連絡、返信を出来なかった。
 ものすごく申し訳ないが、性病を心配した。同性愛者の数は、決して多くはない。多くはない人々の中で、性交渉が行われるということだ。差別ととられるかもしれない、でも、私の中にはそういう考えがある。私は、会ってから日が浅い人や、体をやたらに求めてくる人に関しては、異常なまでに警戒する。
 私も人間だ。時には、情から、線を越えてしまいそうになることもある。でも、やはり無理だ。エイズで亡くなられた方々の映像を何度か目にしたが、見るに耐えない。
 また別の日には「エッチしてくれないなら、遊びにいかない」という、ふざけたことをいう女の子もいた。嫌だというと、電話を拒否られた。理由は、「私、友達はいらないから」。ここまでくると?である。
 そんなこんなで、多分、私は「性」が苦手というか、寄り添いたくないカテゴリーのダントツNo1になってしまった。下ネタも苦手だ。興味がない。
 
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