第13話

文字数 618文字

 私の所属する部署に入社してきた女の子。私は何の興味もなかったが、周囲の上司はかわいいの、美人だの芸能人の誰に似ているだのと大騒ぎしていた。会社帰りの飲み会も、彼女だけが呼ばれた。SPEEDのライブビデオの方が何百倍も大事だった私には、何の関係もなかった。
 彼女は私の斜め前に座っていた。彼女が入社して1か月たったころだっただろうか、休日、桜木町に遊びに行こうと誘われた。御飯を食べ、映画を観、プリクラを撮ったことを覚えている。
 遊んでからは、昼ご飯を必ず一緒にとるようになった。近くのかつどん、スタバ、ラーメンといったところだ。毎日昼を一緒に食べていると、今度は、夜ご飯も必ず一緒に食べるようになった。近くのデパ地下で惣菜を買ったとき、私の部屋で食べることになり、結果、朝から晩まで、仕事も休みの日も夜も、毎日毎日彼女と一緒の状況が続いた。私の中に、恋心は、当然ない。でも、彼女が部屋にきても、邪魔にも感じず、かといって何も感じない、通して空気みたいな存在だったことを覚えている。
 私の部屋にきた彼女がみつけたのは、「はじめてのフランス語」という教科書だ。
「どうしてフランス語を勉強しているの?」と聞かれた。「友人が勉強しているから」と答えた。
私の友人のことを、彼女はあれもこれも聞いてきた。フラメンコやスペイン語を勉強している友人のこと、海外の大学院を目指し、勉強している友人のこと、とすると、彼女は間もなく、。語学の勉強を始めた。
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